自分を犠牲にしない生き方

「より少なく、しかしより良く」

失敗から逃げずに向き合うワケ

 「仕事ができるようになりたいです!」と部下が宣言するとき、僕はこう聞き返すようにしている。

 「じゃあ、具体的にどんな仕事がやってみたいの?」

 すると彼は、「えっと、なるべく周りに迷惑をかけないで、戦力になれるようにしたいです」と答えた。

 彼はとても真面目で素直な性格だが、肝心なところでツメが甘くて簡単なミスをよくしていた。だから、周りに迷惑をかけないようにしたい、と言ったのだろう。だが、きっとこのままでは同じことを繰り返すだけで、成長するのに時間がかかると感じた。

 人はなにかをすれば必ず失敗する。なぜなら、その時の状況や求められているものが違うから、やってみなければわからないことが多いからだ。

 もし思っていたことと違ったり、結果としてうまくいかなかったとしても、そこでしっかりとお互いにコミニュケーションを取ることで、よりよい方法をとることができるようになるのだ。

 しかし、彼のように失敗をしないようにしないようにしていると、自分の言動を指摘されることにストレスを感じるようになる。なるべく注意されないように、なるべく関わらないようになってしまう。

 すると、自分はやるだけのことはやったが、運が悪くうまくいかなかったと考える。これでは、失敗から逃げて、よりよいものを生み出そうとする姿勢がなくなってしまう。

 そこから得られる学びの機会を自分から放棄してしまうのだ。

 彼にとって必要なことは、まず周りの環境や人に対して興味を持つことだ。

 こちらが、頭ごなしに指示をしても、彼は内心納得していない。だから、一つ一つのことに対して、なぜそうやったのか、ほかに方法があるか、自分ならどうするかという視点で考えさせるのだ。

 相手の立場ならどうか、会社としてどういうスタンスで取り組んでいるのか、何度も話をする。

 それに共感するかどうかは、彼次第だ。誰でも、相手の考え方や捉え方はコントロールできない。できるのは、自分自身で考えて行動することなのだ。